恋想戯曲 ♥ Le rêve du papillon
自宅マンションまでたどり着き、カギを開け、ひんやりと冷たいドアノブを回したあたしの目に、玄関に脱ぎ散らかされたままになっている母さんのボロいスニーカーが映る。
「ただいま」と言って上がるけど、わが家の唯一の同居人からのリアクションはない。
きっと仕事で疲れ果て、泥のようにグッスリ寝ているんだろう。よくあることだ。
室内に入ってもまだ肌寒さを感じていたあたしは、せめてアツアツのカップめんでもおなかに入れてカラダの内側から暖かくなろうと、ケトルをコンロの火にかけ、ひとりぼっちのダイニングキッチンのテーブルにつくと、お湯が沸くまでのヒマつぶしにとテレビのリモコンスイッチをONにする。