恋想戯曲 ♥ Le rêve du papillon

「いったァ……あによォ……」と、上半身を起こしてニラみつけるような視線を向けてみると、机の横には黒表紙の出席簿を手にした数学の鎌田(かまた)先生が、冷たい目をして立っていた。手にした出席簿の角で叩いたのはまずまちがいない。

「お前、なにやってんだ?」

「まだ体調よくないし、それにもう解き終わったから寝てたんですよ」

「終わったって、まだ早すぎるだろ?」と、あたしのテスト用紙を裏返して見る鎌田。

「なんだ? 空欄だらけじゃないか?」

「埋められるところは全部埋めましたから」

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