恋想戯曲 ♥ Le rêve du papillon
「そう……なんですか……」

“まだ諦めなくていいんだ”といううれしい気持ちと、“あたしひとりだけが、ぶっちぎりでリードしてるわけじゃないんだ”というガッカリした気持ちが半分半分だった。

「5作品いずれも力作ぞろいで選考は困難を極め、頭を抱えています……ぶっちゃけ僕には決めきれないって感じですよ……」

そう言って、ちょっとうつむきかげんで氷が入っただけの水をクチにすると、まるでブラックコーヒーでも飲んだみたいに苦い表情をする真田さん。

自分の気持ちひとつで、5人のケータイ小説家のうちの誰か1人だけの夢が叶うんだから、責任重大ってことなんだろう。

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