【短編】頭を撫でて?
すると智は、はぁ……とため息をついて、あたしに大きな傘を手渡した。
「年下でごめんね……」
小さな声でそう言うと、智は傘を置いて走って行ってしまった。
その後ろ姿にあたしは声をかけられなかった。
何て言ったらいいの?
年下で何が悪いの?
あたしは別に……彼氏が年下でもよかったのに……智が優しすぎて、大人で……。
年上のあたしが子供で、年下の智が大人で…悔しかっただけだったんだ。
羨ましかっただけなんだ。
ただ…それだけの理由で、馬鹿にして怒って……やっぱり子供なのはあたしだったんだ。
「……馬鹿じゃん。あたし……子供なのは、あたしじゃん」
不意に涙が出て来た。
傘なんて置いてって……智が濡れちゃうじゃん。
あたしが濡れないようにって置いてってくれたの?