恋の心霊スポット
「で、幽名は?幽名決めてくんないと不便なんだけど。」
「あ、すいません。…じゃあ…天宮莉玖で…。」
「莉玖ね、よろしく。」
そう言うと海さんは手を差し出してきた。
「はい。」
私もそれを握る。
どうやら幽霊同士は触れ合えるらしい。
私は本名を幽名にした。
誰にも本名だとは気付かれないだろうし。
いきなり名前が変わると、死んだという現実が痛いほど突き刺さるような気がするから。
「じゃあ私は行くわ。あんたの部屋は303。私の部屋は304だからなんかあったらいつでもどうぞ。あ、それから、このアパートの壁とかは摺り抜けられないけど、生身の人間界の物は何でも通り抜けられるから幽霊は。」
「…ありがとうございます…」
バタン
海さんが出て行った。
幽霊…私が…。
よくよく考えてみればおかしな話だ。
私が幽霊。笑える。
とりあえず私は部屋から出てみることにした。百聞は一見に如かず。色々見に行きたい。
私が扉を開けると向かいの扉も同時に開いた。
そこから出てきたのは…あれ…
え…
「山城翔太(やましろしょうた)!?」
思わず叫んでしまった。