天使と呼ばれたその声を
2分…1分…。
容赦なく刻は刻まれる。
そして、9時を知らせる真後ろにある時計台が無情の時間を私に知らせてくれた。
この人込みだ。
私だと思われないかもしれない。そうであって欲しい。
お願い…私を見つけないで…。
「今晩は」
「……」
「その制服、○○高の子だよね?ミチルちゃんでイイかな?」
俯いたまま、目の前にいる人の皮靴だけを見ていた。声からして40台後半。アイツら、わざわざ、本名教える事ないのに。
「行こうか」
太い手に腕を掴まれて、私は誘導されながら前に足を踏み出した。その間は、ずっと下を向いていた。絶対に顔を上げなかった。