天使と呼ばれたその声を
言われなくても分かる。名前もお互いに知らないし、いうなれば、赤の他人。私が覚えていても、彼女はきっと覚えていないだろう。
直ぐに瞳は反らされて唄い続ける。彼女の歌を聞いていた周りの人も、一瞬何事かと私に視線を向けたが、次第に何もなかったかのように唄う彼女に視線を戻した。
私だけが、ここに存在していない感じだった。叫んでも誰も気にも止めない存在。
…戻ろう。
主人の居る所へ。なんて蔑まれるか分からないけど。明日から学校で無視されるかもしれないけど、仕方ないから…諦める事は慣れっこだから。
踵を返し、俯きながら私は歩き出した。