天使と呼ばれたその声を
「待って」
涙で歪む視界のまま声の方に振り返ると、私を見つめている彼女がいた。
私が止まったのを確認すると、アコースティックギターをハードケースに入れ、身支度をしていた。周りの人達が「後、1曲」と惜しんでいたが、軽く会釈をした後、そのまま私に近づいてくる。
「助けて欲しいって?」
「……」
「何に?」
「……」
自分から彼女に助けてってお願いしたのに、“今の状況”と“日々の状況”が入り交じり、言葉がうまく出なかった。喉の辺りで引っ掛かる。
その時。
携帯の着信音がバックから鳴り響いた。身体が強張り、また手足が振るえだす。