天使と呼ばれたその声を
やっと着信が切れたと思った矢先、
「ミチル!!」
と、聞きたくない声が聞こえた。「何逃げてんだよ!」とか「ふざけんな!」とか。罵倒の言葉を吐き捨てながら走ってくる。
「行くよ」
急に引っ張られた身体は大きく大勢を崩し、危なく転びそうになった。気付いたら、彼女の細く小さな手が私の腕を掴み走り出していた。
後ろからは容赦なく「逃げんじゃねぇ!」って叫び声が耳を貫いたけど、彼女は裏道の更に入り組んだ裏道を走り抜けていく。
そして、古びた居酒屋の横に入るとやっと足を止めた。
まだ聞こえるアイツらの声…。