天使と呼ばれたその声を
ソラの言葉を聞き入れた男の人達は、そのまま路地裏を走り抜けて行った。ソラはそれを見送る事なく歩き始めた。
私はソラに預けられたギターの入ったハードケースを手に持ったままその後ろ姿をただ、呆然と見つめていると、1メートル位進んだソラは、振り返る。
「来ないの?」
「どこに行くの?」
「来ないならイイ」
「……」
「どっちだよ…」
大袈裟に溜息を吐き捨てた。
なんで、見ず知らずの私を助けてくれたのだろう。助けてと言ったのは私だけど、冷たいながらも気にかけてくれるのは何故なのだろう。
ここで別れたら、接点がなくなる気がした。私はあの日、屋上でソラと出会ってから、ソラとの接点が欲しかった。あの歌声をもう一度聞きたかった。
だから…。