天使と呼ばれたその声を

誰が見たってこの光景には唖然とするだろう。
広いフロアにはこれでもかって位人で溢れているのに、もの音一つ立てずに静まり返っている。会話もなく、皆神妙な面持ちだった。

こんなに集まっているのに、何をしているのか聞きたい。テーブルにはそれぞれのお酒が入ったグラスが置いてあるのにも関わらず、誰もそれに手を付ける事もなく、ただ、ただ黙っている。

そんな沈黙を破ったのは、


「ソラ!!」


フロアの奥にある皮の黒い長ソファーから立ち上がり、こちらに駆け寄る男の人だった。
ココにいる人達も相当風格のある人だったけど、馬鹿な私でも直ぐに分かる。この人が他とは違う威圧感があるって事。紛れも無く、頂点に立つ者だって事。


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