天使と呼ばれたその声を
整えられた釣り上がった眉の下に猛獣を思わせるかのような鋭い瞳。無造作にセットされたブラウンの髪と…。
息を飲む程の綺麗な顔立ち。
その人がソラに駆け寄ると、大きな手が頬に触れる。猛獣の瞳が細くなり、
「大丈夫か」
と、低い声で、優しく言葉を発した。
「平気」
ソラは相変わらずでトーンに強弱も付けずに返事をした。
「それならいい」
「キョウ、ごめん」
「もう、走るな」
「……」
「分かったな?」
「……」
それはまるで恋人同士のような雰囲気だった。違う。確実に恋人だと思った。その光景が心にとてつもない焦燥感を与える。
恋人同士が羨ましいのではない。ただ、こんな風に無償の愛で包まれているソラが凄く羨ましかったんだ。