天使と呼ばれたその声を
私は知らない。
誰にでも好かれる条件を。
取り乱す程心配される事を。
大事にされる事を。
笑顔を繕って、一生懸命人に縋り付いて、それでやっと人間関係を成立させているのに、ソラはそんな感じではない。
素っ気なくしても、無表情のままでも人が付いてくる。
もしかしたら、ソラに付いて来たのは間違いだったのかもしれない。こんな現実を目の当たりにしたら、日々努力した揚げ句に売りをさせられてしまう自分が可哀相で仕方ない。
軽く息を吸い込み、ゆっくり吐き捨てる。ソラに預かったギターケースを床に置いた。
ソラにもう一度お礼が言いたかったけで、今の状況に割って入る程の度胸がない。
しかし、帰ろうとした私に、
「アンタ、誰?」
優しかった声が威圧的な声に変わった。キョウと呼ばれている男が私を引き止めた。