天使と呼ばれたその声を

「あ…」

その質問はごもっともだと思う。知らない人間がずっとココに突っ立っていれば誰だってそう言うだろう。


「拾った」

「拾っただ?」

「だってこの子。命を捨てようとしていた」

「……」


キョウは無言のまま目を細めて私の瞳を見つめていた。
ソラはきっと屋上での事を言っている。あんなに真っ暗だったから覚えていないとばかりに思っていたのに…。
そう思ったら、涙が出そうになったけど、下唇を噛み締めて感情の波を抑え込んだ。


ソラはそれ以上は語らずに、私が置いたギターケースを手に取りフロアの奥。キョウが座っていた長ソファに向かって歩いていく。

そして、ギターの音が鳴り、フロアにソラの歌声が響き渡った。

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