天使と呼ばれたその声を
…どこかで聞いた事があるこの曲は…。
「アメイジング・グレイスか」
キョウは唄うソラを優しい眼差しで見つめた。そしてソラを見つめたまま、
「アンタ名前は?」
「……ミチル」
「ミチル、アイツ唄最高だろ」
「はい…初めてあの声を聞いた時、救われました」
やっとキョウの視線が私に向けられる。ソラを見つめていた時と同じ優しい瞳で。
「何歳?」
「17です」
「ソラと一緒か。なら酒はダメだな…」
そう言うと、キョウは私を手招きして、ソラが唄う目の前の特等席に案内してくれて、近くにいる人に飲み物を頼んでくれた。
直ぐに持ってこられたビールをキョウは直ぐさま喉に流し込み、気持ち良さそうにフーっと息を出す。私は手渡されたオレンジジュースには手を付けずに唄うソラをその目に焼き付けていた。