天使と呼ばれたその声を

ソラもそうだったけど、キョウも何故、今日出会ったばかりの私にそんな優しい言葉を与えてくれるのだろうか。

私には分からない。私と仲良くしたって得な事はないのに…。


ソラの歌が終わった。
フッと顔をあげると大きな瞳で私を見ている。
そして、あの時と同じで、親指を立てている。


「こっちに来いってよ」


軽く肩を揺らしながら笑うキョウ。意味がわからずソラの近くにいくと、ソラはとんでもない事を言って来た。


「何か歌えない?」

「えぇ!?」

「歌えないかって聞いてる」

「む…無理!」


そのやり取りに周りが盛り上がり、“歌えー!”とヤジが飛び交う。キョウも言った通り“天使の声”と呼ばれているソラの後に歌えるはずもなく…。


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