天使と呼ばれたその声を

「そうか、音痴か」

「お、音痴じゃないし!」

「じゃあ、歌え」

「無理!」

「……音痴」


意地悪なのに、意地悪だと感じないのはソラだったからだと思う。無表情だけど、ちゃんと汲み取る事が出来た。泣いていた私を元気付けようとしているのだ。


私とソラを中心に笑いが広がる。初めてだった。なんの見返りもなく接してくれる人と出会ったのが。これまで我慢を続けていた私が報われた気がした。

何故、ソラを見て焦燥感を感じたのだろう。今ならわかる。ソラの周りに人が集まる理由が。
私もその1人。不思議に人を引き付ける魅力がある。


「ソラ、ありがとう」

ずっと言いたかった言葉をそっと口にすると、ソラの口元が少しだけ綻んだ。


< 41 / 89 >

この作品をシェア

pagetop