天使と呼ばれたその声を
「ソラ、誰だ」
「知らない」
「知らないだぁ?」
「コイツに聞いて」
ソラは隣で俯く私に視線を向けた。どうすればいいかわからなかったから、何も言えない。
最善な形を探すけれど、どれも最終的には壁にぶちあたる。
「ミチル」
ソラが初めて私の名前を呼んだ。ハッと思考回路を中断させてソラを見つめた。真っ直ぐで曇りのないその瞳の中にアイツ等と同じ恐怖で顔を歪めている自分が映った。
「アンタはアタシに助けてと言った」
「……」
「だけど、自分で何かを変えなきゃ状況は変わんない」
「ソラ…」
「動け」
アタシ達がいるじゃんって口にはしないけどソラがそう言った気がする。ここで逃げたらまた私はあのビルのフェンスの外側に立つのだろうか。