天使と呼ばれたその声を
体育座りのままフェンスに背を付けて、静かに瞼を落とす。
顔に当たる夜風がとても気持ち良かった。
視界を閉ざした私の耳に届くのは、さっきよりもクリアに聞こえる騒がしい街の音…。
……歌。
…歌?
アルペジオで弾いていたアコースティックギターの音と共に歌が聞こえる。
なんて、澄み切った声なのだろか。今までの自分が救われるような…全身に鳥肌が立つ程の極上の声。
その声は次第に間近になり、後ろに気配を感じた。
歌が止まる。
「ねぇ、飛び降りるの?」
話し声さえも美しい声。