天使と呼ばれたその声を

たまり場の店に着くと、長ソファに横たわるソラの姿があった。ギターを両腕に包み、抱きしめながら眠る姿は、まるで愛おしい人が隣にいるような寝方だった。
痛い位に頬にギターを押し当てて、それでも心地良さそうに眠るソラ。

キョウは淋しそうな、呆れているような表情でそれを見つめていた。近くにいた人に毛布を持ってくるように命令した後、


「あれ以上のプレゼントはねぇ…、か」


キョウには決して似合わない小さくて今にも消えてしまいそうな声が耳に届いた……。


「あのギターはプレゼントなんですか?」

「あぁ」

「キョウさんが?」

「いや」

自嘲的な笑みを浮かべるキョウ。これ以上は勘弁してくれって感じで、私もそれ以上聞くのを止めた。ソラは、キョウの気持ちに気付いているのだろうか。
キョウがこんなにも切ない表情をしている事を知っているのだろうか。

ソラが眠る長ソファの直ぐ近くの床に座り小さな寝息を立てているソラの顔を横目に見る。


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