天使と呼ばれたその声を

次第に横目で見ていたのが、大きく目を見開き、凝視した私。
眠るソラの閉じてある瞼から涙が流れていた。
哀しい夢でも見ているのだろうか。ギターを抱きしめる腕の力も強くて、必死で何かに縋り付いている感じだった。

声をかけようと思ったけど、涙を流すソラの顔は無意識な行動とは反比例していて、とても穏やかだったから起こそうとした手を止めた。


ふと、目に入ったのはギターの下の部分。ローマ字で“HARU”と彫られていた。

“あれ以上のプレゼントはない”

ギターを見てキョウは言った。もし、ソラへのプレゼントなのであれば“HARU”と彫られているのは明らかに可笑しいと思う。

よく見れば、そのギターは年期が入っていて、所々キズが付いていて、あの時…ソラと一緒に走った時、ギターを持った私にソラは凄い剣幕で“それをキズつけたらただじゃおかない”って睨んだくらいだソラが付けたキズとはとても思えない。



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