天使と呼ばれたその声を

独特の消毒液の匂いと白に囲まれた部屋。決して寝心地がいいとは言えないベッド。
目を開けた時には病室にいた。
何故、ココにいるのか理解出来ない。お母さんと怪我をしながら繁華街を歩いたのは深夜。今は眩し過ぎる太陽が既に真上に移動していた。

出来るなら病院の受診は避けたかった。保険に入っていなかったから…。お金なんて持ち合わせてないのに、一体この治療費はどうやって払うべきなのだろうか。

頭を撲られたにも関わらず、意外にも現実的に考える私の意識はハッキリしているものだった。

「起きた?」


声のした方に顔を向けると、看病する人用に壁に隣接された簡易ベッドに寄り掛かり、相変わらずギターを腕に抱きしめているソラが少し不機嫌気味にこちらを見ていた。

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