天使と呼ばれたその声を
確かに聞こえたソラの声。
やっぱりなって思った。
あの時、ソラが私達を助けてくれたのだ。
「ソラ、ありがとう…派手に転んじゃってね…?」
「アンタさ」
笑いながら嘘を言ったからバレたのかと思った。元々、なんでも見透かすような瞳を持つソラには嘘なんてもんは通用しない。それでも家庭内暴力を受けているなんて事実は知られたくない部分であって…。
「隣の女の人も一緒に転んだの?」なんて逆に質問されたらなんて答えようか、頭の中は珍しくフル回転していた。
……が。
「アンタ、店にバック忘れてたよ」
ソラの意外な返事に拍子抜けした。見ればソラの座る直ぐ横に私の学生鞄が寄り掛かかっている。
「誰のか分からなかったから、中、見た」
「…うん」
「生徒手帳あって、アンタのだって分かった」
「…うん」
「……」
「……」