天使と呼ばれたその声を
でもここから出て、私はドコに行けばいいのだろうか。
お母さんの実家には行けない。
キョウにあんな困らせる事を言っておいて、図々しくあの店には行けない。
だとすると、やはり帰る場所は一つしか思い浮かばない。
「失礼するよ」
病室の扉が開くと同時に慌てて涙を拭った。視線を窓の外から入口に向けると、そこにはソラと、白衣を身に纏った男の人。
「ミチルちゃん、気分はどう?何時もと違う所ある?」
私のカルテらしきものを開き、何かを書き込んでいるその人の首から下がっている名札を見ると“医師”としっかり示されていた。
とても、雰囲気が柔らかい先生だと思った。それは少し目尻が下がっているせいかもしれないけど…。
「ミチルちゃん?」
「……」
「オィ!質問に答えな!」
すっかり先生の雰囲気に飲まれていた私をソラは一喝した。