天使と呼ばれたその声を

意外な彼女の台詞に重たかった瞼が一気に持ち上がる。とりあえず、かなり怪訝そうな顔をして右手の親指を立てながら、内側を指していた。


「早く」

綺麗な声のくせして、かなりの気迫があるのは確かで…。
気の弱い私は素直にそれに応じていた。きっと、それだけじゃなかったと思う。彼女の声には何故か逆らえない自分がいた。


フラフラな身体を気持ちだけで支え、フェンスを乗り越えた私はやっと内側に移動をした。力なく彼女が座るすぐ横のコンクリートにひざまずくと、タイミングを見計らったかのように、ジャーンと軽快なギターの音が響き渡った……。



< 8 / 89 >

この作品をシェア

pagetop