天使と呼ばれたその声を
そして、彼女はまた唄う。あの極上の声で。聞いた事のないその歌はとてつもなく哀しいメロディだった。
キャンドルの頼りない光に照らされている彼女は、声を振り絞るように、暗い空に向けて唄い続ける。一体誰に向かって唄っているのかは分からない。だけど、その時の私はまるで自分に唄ってくれている気がしたんだ。
だって、このデタラメな英語を並べている歌は、怒りや哀しみ。絶望や不安。そんな気持ちに支配されていた魂が綺麗に浄化される。
魂を鎮める鎮魂歌……。
透き通るその声で、私の身体に入り込む。
頬に、何かが伝った。
両手を見つめると、小刻みに震えていて、それを頬に当てると、とめどなく大粒の涙が溢れていた。今更ながら怖かったのだと実感した。