委員長のヒ・ミ・ツ
コトが済むと、ルリカは別れを惜しみながらも仕事に戻っていった。


司は、私服に着替えると、ふと鏡に映った自分を見、自分についたルリカの口紅を手の甲で拭いた。


控え室を出た司は、スタジオに戻ってアツさんの元に戻った。


アツさんは、数人のスタッフと、さっき撮影した司の写真を選んでいる最中だった。


「司、お前どこいってたんだよ」


「着替え」


そう答えると、司も自分の写真を見ていた。


このクソ暑いのに、涼しい顔をして、秋物の服を着て微笑んでいる自分。


なんだか、こっけいに見えて、思わず笑ってしまった。



本城司は、クール。


いつの間にか、そう思われるようになった。


昔は、そうでもなかった。よく笑ったし、バカな事もしたし。


だけど、カメラの前ではクールさを求められた。


「司は、クールな方がいい。」


事務所に入るとき、社長から言われた言葉だ。


だから、笑うときも微笑む程度で、決して口を大きく開けたりしない。


そんな俺が当たり前になってきて、


たまにそうじゃない俺を見た人間は、


「司くんって意外。」だのなんだの煩くなってきて


いつのまにか、「本城司」を演じるようになってきた。






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