友愛日和
自転車置き場に到着。


レイジは器用に、スポーツバックを自転車のカゴの中に収めると。

「ほら、乗れよ!」

いつものように。

僕に向かって言う。

僕は後ろの席に座って、サドルの下の部分を掴む。


レイジの身体に、この腕は回せなくても。


「行くぞ~!」

レイジは立ちこぎで勢いをつけてから、校門から外に飛び出した。

僕はレイジの背中を見つめたまま。

声をかける。

「レイジ、あのさ。」

「ん?なんだよ?」

「前々から言おうと思ってたんだけどさ。」

「うん?」


土手沿いの道を。

二人乗りの自転車が、風を裂いて走って行く。


「ちょっとスピード出しすぎで、危ないよ?」

「んなことは、もっと早めに言えよぉ~!」

レイジがそう言った瞬間。

小さな石に。

タイヤが進路を奪われて。

レイジの果敢な操縦も虚しく。

僕達は土手沿いの道から外れ、川のほうへと向かって突進し。

二人とも自転車から、放り投げ出されてしまった。
< 51 / 54 >

この作品をシェア

pagetop