吹いて奏でて楽しみましょう

さらに翌日。


時間はあっという間に過ぎ、今日に限って麻希に会うタイミングもなかった。


「昨日のこと相談したかったのに…」


給食準備中。私は教室にいて、仕事をしている。


「楓さーん、先輩が呼んでるよー」


え?
あ。


教室のドアから見覚えのある顔が見える。

…来たか。


廊下に出ると。
「ごめんね。今大丈夫だった?」
と昨日の先輩が聞いてくる。


会うのは2度目だが、向こうも若干気をつかっている…?


「はい、大丈夫です。」
ぎこちない笑顔で言うと。


「そう?…これ交換日記。これにいろいろ書いといたけど、わからないことがあったら聞いてね?」


といって渡されたのは、花柄模様の普通の厚さのノート。
紺色を基調としてる所がお姉さんぽい。


「ありがとうございます…。」


私はすでに相手の名前を忘れているため、言葉少なめに礼だけ言う。


「じゃあ次は楓ちゃんが書く番だけど、三年の教室来るの緊張するよね?また私がここに来るから、あさってのこの時間は大丈夫?」


「はい。大丈夫です。」


「じゃあ、またあさって来るね。」


短い会話。でもそれだけで私には充分だ。
まだはっきり何が起こっているのかわからないのだから。


ノートを持って教室に戻ると、クラスメートから

「もしかして、先輩と交換日記してるの?」

と聞かれた。


え!?なぜこれが交換日記だとわかるの!?エスパーか?


「そうだけど?」ドキドキ。


「同じだ。私もしてるよ。」


え?


すると、他の子が
「いいな~、もうしてるんだ。私もやりた~い。」


え?そうなの?


なんか、私が知らない風習があるらしい。


つまり、先輩と後輩が日記や手紙を交換して仲良くする。


どういう理由か知らんが、別にこの中学では普通のことなんだ。


そうとわかれば、ちょっと安心。


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