吹いて奏でて楽しみましょう
あっじぃ~
ミーンミンミンミーンー
夏休みも近づいた放課後、じりじりと照らす太陽に汗が滝廉太郎状態だ。
…頭おかしくなってるっぽい。
楽器を直射日光にあてると、日焼けて黒くなるため、かろうじて影にはいるのだが、風も何もない。
タオル、タオル…
汗を拭いて空を見上げる。
まぶしい。
濃い水色の空。
空の色は涼しそうなんだけどな。
楽器に視線を移すと銀色のフルートに空色が映って水色に輝いていた。
わあ、キレー。
だけど、あつい。
「メトロノーム取ってこよう…」
部室に行くと聡美先輩がいた。
「あ、楓ちゃん来て来て。」
「?はいお邪魔します。」
「昔の大会の写真置いてみたの。やる気でるかな~と思って。」
黒板のチョーク置き場にB4ぐらいの太い台紙がついた白黒写真が所狭しと並んでいる。
「…いつの写真ですか?」
舞台上で演奏している写真。
「う~ん、15年以上前かな?
昔はね、この学校全国大会常連校だったんだ。」
「え!?全国大会って、九州大会で選ばれた学校が行く?」
「そう。しかも金賞取りまくってたのよ~。その写真。」
「すごいですね~」
改めてまじまじと見てみる。
「楽器って高いでしょ。今使ってる楽器はね、この当時に国大でもらったものが多いんだよ~。」
「へぇ~、なんかかっこいい。」
「先輩達のおかげで今も楽器が吹けるわけ。たまに他校にも貸したりするし。
ま、うちも借りたりするけど。」
「全国大会か~」
チラッと、この当時に生まれてみたかったなと思った。