吹いて奏でて楽しみましょう
変わった練習といえば、グラウンドの後ろにある、あまり使われていないスタンドで吹いたことがあった。
「今日はスタンドで練習しまーす。楽器だけ持って集合ー」
放課後のグラウンドは部活に励む生徒がたくさんいる。
そこを制服で迂回しながらスタンドに行くと音出しを始めるのだが、
「う、なんか微妙に恥ずかしい…」
いつもと違う吹奏楽部の行動に何ごとかと注目する人たちもいる。
それに、
「木管は楽器を日にあてないように!
影でやって!」
わ~い。金管の皆さんすいませぬ。
が、
「先輩~影が足りませ~ん」
きゃ~楽器が焼けるよ~
「…今日のスタンド練習はここまで。」
楽器を日光からかばいながら、校舎までダッシュ。
別の日、この時もやや不興のスタンド練習。
「合奏しまーす!楽譜ないけど、暗譜してるよね?」
「…やば。」
結果。
「ちゃんと暗譜しないと!」
「はい!すみませんでした!」
その後の個人練習。暗譜してないため、練習にならず。
楽譜を持ってくると、風に煽られてバタバタと倒れていく譜面台。
「あ!楽譜が!」
トランペットの子が慌てた声を上げた。
グラウンドまで飛んだ楽譜を恥ずかしそうに取りに行く。
スカートや髪も煽られ、とても楽器を吹くどころじゃない。
「わー忘れ物しちゃった。」
「え?どこに?」
「部室。」
「遠いね。部室…」
……。
結局、スタンドでの練習は2、3回で終わる。
音を遠くに飛ばすのが目的だったんだけど。
虫さされや、土埃で咳き込み制服も砂まみれという汚点つきだった。