吹いて奏でて楽しみましょう
「あ、琴子聞いた?昨日のこと。」
琴子も休みがちだった。
だから、そう聞きたかったけど、怖くて聞けなかった。
しかし。
「楓、昨日部活来た?ミーティングあったみたいだけど。」
「うん。…あったよ。」
「楓、私ね。
部活辞めようと思ってる。」
!!
「ウソ…なんで?!」
「うん、理由はいろいろあるんだけど、なんか嫌になっちゃったてゆうか…」
私は真剣に聞く体制に入る。
「朝早く起きて、放課後すぐに練習でしょ。
舞台前は休みないし、疲れて帰ってきたら8時とか…。
それからお風呂入ったりご飯食べたりして、学校とか塾の宿題…。」
うん。確かに大変だよね。てか、塾通ってるんだ!?
「習い事とかも辞めたのあるし、テレビとかも見れないし。
部活休むのも先輩に気をつかうし。
それに。成績も前より落ちて上がらないんだよね~。」
「成績か~。」
たぶん最後のが一番のきっかけだ。なんか切実そうだった。
私も正直、成績は落ち続けてるのでなんとも言えない。
「楓はテストの成績どう?」
「う~ん、私も落ちてる…」
「親とかなんとも言わない?」
「うん。うちはあんまり言わない。
琴子の親って厳しいの?」
ウチはのんびりしてるが、勉強にうるさい親は多いと聞く。
「うん、たぶん。…でも普通かな?
とにかく私も辞めたいし。なんか疲れた。
楽器は吹きたいし、演奏は楽しいけど…
勉強は大事でしょ?でも部活はやらなくても自由だし。」
「そっか…。そうだよね。」
琴子の将来に関わるなら何も言えない。
「でも、文化祭は出るでしょ?」
せめて文化祭ぐらいは…
「う~ん、たぶん。どうかな?わかんない。」
「え~、そうなんだ~。でも、寂しくなるよ~。」
「うん。ごめんね。」
私、また一人?
はぁ~。
琴子のいないところで思いっきりため息をついた。