吹いて奏でて楽しみましょう


「あ、琴子聞いた?昨日のこと。」


琴子も休みがちだった。
だから、そう聞きたかったけど、怖くて聞けなかった。


しかし。


「楓、昨日部活来た?ミーティングあったみたいだけど。」


「うん。…あったよ。」


「楓、私ね。
部活辞めようと思ってる。」


 !!

「ウソ…なんで?!」


「うん、理由はいろいろあるんだけど、なんか嫌になっちゃったてゆうか…」

私は真剣に聞く体制に入る。


「朝早く起きて、放課後すぐに練習でしょ。

舞台前は休みないし、疲れて帰ってきたら8時とか…。

それからお風呂入ったりご飯食べたりして、学校とか塾の宿題…。」


 うん。確かに大変だよね。てか、塾通ってるんだ!?


「習い事とかも辞めたのあるし、テレビとかも見れないし。

部活休むのも先輩に気をつかうし。


それに。成績も前より落ちて上がらないんだよね~。」


「成績か~。」


たぶん最後のが一番のきっかけだ。なんか切実そうだった。


 私も正直、成績は落ち続けてるのでなんとも言えない。

「楓はテストの成績どう?」

「う~ん、私も落ちてる…」

「親とかなんとも言わない?」

「うん。うちはあんまり言わない。

琴子の親って厳しいの?」


ウチはのんびりしてるが、勉強にうるさい親は多いと聞く。


「うん、たぶん。…でも普通かな?

とにかく私も辞めたいし。なんか疲れた。

楽器は吹きたいし、演奏は楽しいけど…

勉強は大事でしょ?でも部活はやらなくても自由だし。」


「そっか…。そうだよね。」


琴子の将来に関わるなら何も言えない。


「でも、文化祭は出るでしょ?」


 せめて文化祭ぐらいは…


「う~ん、たぶん。どうかな?わかんない。」


「え~、そうなんだ~。でも、寂しくなるよ~。」


「うん。ごめんね。」





 私、また一人?

はぁ~。

琴子のいないところで思いっきりため息をついた。



< 160 / 467 >

この作品をシェア

pagetop