吹いて奏でて楽しみましょう
「琴子辞めたらしいよ。」
「!」
やっぱり…
茜の言葉に覚悟はしていたものの、ショックを受ける。
「はぁ~あ。そっかぁ~。
落ち着いたら復帰するとか、ないかな?」
私は一縷の望みをかけて聞く。
「…たぶんそれはないかな。
実は琴子のお父さんアメリカに転勤するみたい。」
「転勤か、え!?え!?アメリカ!?今アメリカって言った?」
「うん、私もびっくりした。だから琴子達家族でアメリカに行くらしい。」
「マ…ジ?」
この学校からもいなくなるのー?
バタバタバタバタ。
次の日、琴子を廊下で見つけた私は思わず駆け寄った。
「楓?どうしたの?」
「琴子、アメリカ行くって本当?」
「あ、楓には言ってなかったか。家でもついて行くか迷っててさ。
ほら英語話せないし。
最近決まって。」
「そうなんだ。
じゃあ期間は?短いの?」
「ううん、たぶん2、3年…もしかしたらもっとずっと長くなるかもって。
だから家族で移住することになったんだ。」
「そんなに…。はぁ、じゃあ本当にさよならだね。」
「うん。」
「えー、やだー。」
「そう言われても…。」
だって、私的には吹部で一番気のおける友達だったのだ。
「私一人置いてく気?」
「がんばって。」
「冷たい!あ~あ、つまんなくなる。寂しい。」
「うん、一人だしね。私もちょっと寂しい。」
「ちょっと!?」
「いやいや…。かなり?」
苦笑いで返す琴子はクールだけど、優しくて。