吹いて奏でて楽しみましょう
それからというもの、何かを埋めるように他の楽器の子と集まっては合奏したり、おしゃべりをしたりして笑い転げた。
他の子も同じ楽器の子が辞めていって、一人で練習するのは寂しいからと、残された子達は寄り添いあうように集まって楽器を吹いた。
「あ、あたしそこの所好き。次はこの曲合わそうよ。」
「うん!どこからにする?」
「最初からでいいんじゃん?」
一人が言い出しては合奏し、終わってしばらくするとまた誰かが言い出す。
「~♪」
私が曲を吹こうとすると、茜がフルートのパートを歌い出した。
「!なんで知ってるの?」
出だしの部分だが、主旋律ではなく、フルートにしかないメロディー。
主旋律を吹くクラリネットの茜だけでなく、みんなからもフルートの小さな音はあまり聞こえてないだろうと思いこんでいたので意外だったのだ。
「え?知ってるよ?なんで?
私このメロディー好き。」
「あ、私も。」
サックスの恵も同意した。
「意外…。聞こえてたんだ。」
「当たり前じゃん。」
私の言葉に不思議そうに笑って答える。
私の音もちゃんとみんなに届いてるんだね。
しかも気に入ってくれてる。
一方的にみんなの音を聴き、自分の音が消されてるようで、誰にも気づかれてないようで、そんな寂しさを少し持ってたことに気づいた。
だから余計に嬉しくて、頬がゆるんだ。