吹いて奏でて楽しみましょう


そんなこんなで時はあっという間に過ぎ、大晦日を迎えていた。


我が家は例年大掃除に追われている。


私も一年間の埃を洗うべく自分のテリトリーをひっくり返している時だった。



「楓ー電話よー。」


「え!?私?だれから~?」

 大晦日に電話してくるなんてお姉ちゃんとか?


「う~んなんか吹奏楽部の方らしいけど?」


「え!?」


「國吉さんーだったかしら?」


 聡美先輩!?なんで?


「もしもし、楓です。」

「あ、楓ちゃん!?今大丈夫?」

「はい…?」

「実はね、今から部室の大掃除やるんだけど、来れる?」


「え?今からですか!?」


「うん、毎年恒例なの。できれば来てほしいんだけど…。」


「…はい、わかりました…。」


チン。


恒例って…12月31日だよ?晦日だよ?

あ、晦日だから、か…。


私は夜までかかるだろう、自分の掃除途中の場所を見て、ふっとため息をついた。


 でも、普通は29日とかさ~、それぐらいにやるもんじゃないのかい?


なんて思いながら、学校までの道のりを急ぐ。


母も私が部活へ行くと言うと、今日も!?と驚いていたが、

「部室の大掃除だって。」

と言うと、
「あぁ、なるほどね~。まだ掃除してなかったの?
ご苦労様ね~。」


と納得してしまった。


大晦日の道を一人歩く侘びしさを感じずにはいられなかった。



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