吹いて奏でて楽しみましょう

「あ~あ。これでクラリネットともお別れか…」

「サックスが嫌いなわけじゃないんだけどね。」


 うん、そういう問題じゃない。愛着の湧いた楽器と不本意に別れるのが辛いのだ。


「でもさぁ、一番かわいそうなの一年生じゃない?」


「うん。そうだよね~、木管から金管に移されてさ。」

「フルートの子なんか、トロンボーンだよ。全然違う楽器じゃん。」


「…辞めないといいけど。」

「辞めるんじゃん?」

「莉奈(リナ)!」

割とさばさばした性格の元クラリネット莉奈が冗談ともつかない調子で言ったのを、茜が止めた。





次の日

「お~い足りない楽器借りてきたぞ~。くれぐれも大事に使えよ。」


顧問がサックスなどを運んだ。近隣の学校から借りたそうだ。

 借りてまで…。


「楓達は、たまには元の楽器も練習しといてくれ。」


サックスは、4人全員アルトを吹くことになった。

ことの起こりは昨日。


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