吹いて奏でて楽しみましょう
「来年もこんな感じなのかな~?」

「やだ~。なんか暗い。」

「でも増える気もしないし。」

「だったらもう本当に辞めるけど?私」

「え~!?」

「だって受験生だよ、うちら。」


新年度への期待もこの日は虚しかった。



2月に入ろうという頃、吹奏楽部員は顧問に集められた。

「実は、生徒会がうちの中学に入る小学生を対象に小学校を訪問するんだ。」

 中学がどういうところかをあらかた説明するってことかな?

「初めての試みなんだが、それに部活動の一例として吹奏楽部も参加しようと思う。」

「え!?」

「うちがやれば、他の中学の吹奏楽の宣伝にもなるし、再来年の為に5年生にも聞かせようと思う。」

 気が早い。

つまり、あくまで生徒会のオマケでアピールしに行くわけだ。

各小学校には他の中学に行く子も多いわけだが、

吹奏楽に関心を持てばその子達も他の中学で吹奏楽部に入ることはあるかもしれないのだから、アピールしても他校から苦情が来ることもないだろうと、いうことか?

「ただ、楽器を運ぶのが面倒なんだが…。」

「何校回るんですか?」

「うん3校…多くても5校かな?できれば区域内の学校は全部回りたい。」

「5校…。まさか、徒歩で?」

「しかも楽器を持ってだ。」

「え~!!」

「ま、ティンパニーとか打楽器はムリだから、できるだけ車を用意するが。」

「一番遠い学校て、どのぐらいするの?」

「30分ぐらいかな?ま、10分ぐらいの所もあるし。」


この地域は坂も多い。
なんか大変そうだが、反対する者はいなかった。


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