吹いて奏でて楽しみましょう
「今日で部員が50人になった。ささやかだが、お祝いにお菓子をやろう。」
帰りのミーティング。先生がお菓子の入った袋を持ってきた。
姿が見えないと思ってたら買い出しに行ってたんだ。
50人で分けるとなると一人分はたかがしれてるが、それでも大量のお菓子だった。
みんなが帰って3年だけになると、端数分のお菓子をジャンケンで分けていた。
「吹奏楽祭の曲だがな。」
「いきなりですね。先生。」
「曲決まったの?」
「あぁ。この2曲でいこうと思う。」
この2曲とは…楽譜を見るなり、みんな仰天した。
「これ!歌謡曲ですよ?先生。」
去年取り寄せた流行りの過ぎた歌謡曲2曲だ。
「そうだ。時間もないしな。これでいいだろ。いや、これがいいだろう。」
「吹奏楽祭で歌謡曲やってもいいの?」
しかも2曲ともなんて。
「あぁ。特にクラッシックをやれとか決まりはないぞ。祭りなんだからこの方が盛り上がるだろ。」
「いや!それはわからないですよ?去年小学生にうけてなかったし。」
「むしろ不評だった。」
「またこれ~?私、もう散々やって嫌~。」
恵は元々ハードロック系が好きで、あまり好んでなかったしね。
それでなくても、みんなかなり飽きてきている。
「別のにしましょう?」
「そんなにいやか?お前らが選んだんだろう?この楽譜。」
そうなのだ。去年の夏に2曲だけ楽譜を買ってやると言われ、喜んで選んだのだが。
「私はジャンケンで負けたから別に好きじゃないです。」
「それにもうこれ古いし~。」
流行りは飽きられるのも早い。
「逆に恥ずかしいよ。」