吹いて奏でて楽しみましょう

「はい。これで一通り終わり。と言いたいところだけど、」

去年までは楽器を使ってのタンギングはシー♭だけだったんだ。

「これも去年先生に言われて、タンギングも全音階やることになりました。」

「えー!」

 まぁね、タンギングするのはシー♭の音だけじゃないからね。でも。

「これも少し時間がかかるので今日は省きます。
あくまで基礎練は曲をきれいに吹くため大事なので最低でも30分はやって下さい。」

「はい。」

「じゃあ、イス片づけて各自練習に戻っていいよ。」

曲はまだ渡されてないので、今日までは教則本や基礎練みたいなものだ。


「比奈ちゃんちょっと。」

みんなが去ってから私は比奈ちゃんと教室の外に出た。

「今みたいな感じでやっていくことになるけど、比奈ちゃん大丈夫?」

後輩もいるから恥ずかしいかもしれない。

「えーと、はい、大丈夫です。ちょっと難しいけど。」

「そう…。本当に?」

「はい。」

 いやいやちょっとじゃないだろう~。

「じゃあ、辛くなったりなんかあったら、言ってね?私に言いづらいなら貴子ちゃんでもいいし。」

「はい。ありがとうございます。」

「ううん。ところで、タンギングはできるようになった?」

「え?えーと…」

「ちょっとマウスピースだけで吹いてみてくれる?」

「はい。」

フーフーフーフー。

 う~ん。やっぱり…

「うまく舌使えない?」

「使っているつもりなんですけど、難しいです。」

「そっか~…」

 あ~どうしよう。

「トゥーって言ってみて。」

初めてタンギングを教える時に言うことを繰り返してみる。

「トゥー」

「じゃあさっきのリズムをトゥトゥトゥで。」

「トゥートゥー…」

 発音はできるんだよな。若干危ういけど。

「今度は舌に意識を置いて、声は出さずに。もう一回。」

トゥー、トゥー…フーフー

 だんだん、ふーに変わってる…。

 でも待てよ?トゥが言えるってことは、全然舌が使えないってことではないのか?

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