吹いて奏でて楽しみましょう

「その調子で楽器を口に当てて。」

ー♪

 お?音が少ししっかりしたかな?

フーフー♪

 あ~戻った。

「一番最初の感じが良かったかな?
タンギングって舌の力だけで流れる息を止めたり出したりするから、肺筋を使うより遥かに楽なのよ。
比奈ちゃんは今ちょっと一音一音出すのが苦しいでしょ?」

「…はい、でもタンギングをすると音が出なくなるんです。」

 それは、多分タンギングを使うほど息が続かないせいね。

それほど比奈ちゃんにとっては音を出すのが難しいのかもしれない。

「どうした?」

「あ、先生。こんにちは。」

先生が音楽準備室に入ってきた。

「比奈の個人レッスン?どうだ?」

「タンギングがちょっと難しいらしくて。」

「タンギングは大事だぞ~。ちょっとやってみ。」

先生が個人レッスンを初めたが、
だいたい私のやったことと似ている。

「タンギングと言うより、まずは腹筋だな。音を伸ばせないと。まぁ、焦らないでゆっくりやりなさい。」

「はい。」

比奈ちゃんが戻った後、先生に相談してみた。

「先生、今日からフルート全員で一緒に基礎練やってるんですけど、比奈ちゃん全然できなくて。」

「まあ、あの様子ならな。」

「ちょっと一人だけ出来ないのが可哀想な気もするんですけど…」

「う~ん、本人は一人でやりたいって?」

「いえ、大丈夫とは言ってるんですが…。」

「なら、しばらくはそれでやりなさい。」

「…はい。」

「心配か?」

「はい。
曲もファーストとセカンドをどうしようかと。」

「ああ、そうか楓はピッコロだしな。」

「貴子ちゃんはファーストで決定していいと思いますが、あと一人が決められなくて。」

「うん。比奈は当分セカンドにしよう。一年はどんな感じだ?」

「まだ楽譜が降りてないので、詳しいことはわかりませんが、洋子ちゃんは音が大きくて技術面は普通です。藍理ちゃんは音は小さい方ですが、技術面はかなりいいです。」

「そうか。セカンドも大事だしな。しばらくは、セカンド3人にして、様子を見よう。合奏の時に実際聞いてから判断するよ。」

「はい。わかりました。」


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