吹いて奏でて楽しみましょう
「でも、賞も何もないからそんなに心配することないよ。」
「なんだ賞無いんですか。」
「コンクールじゃないからね。でもあまりにも酷い演奏だと恥をかくおそれはある。」
「えー!やっぱこわーい!」
「あはは。大丈夫大丈夫。みんな初心者だから、条件は一緒。」
本当にこの子は反応が面白い。
そうこうしているうちに練習時間が終わってしまった。
は!!実は自分が一番ヤバいのでは!!
「そうだね。私なんか後輩の指導ばかりで全然練習してない。まだ指遣いも危うい子いるし。」
帰り道、いつもの5人で歩く中、茜が言う。
クラリネットは最多の13人。
「マウスピース吹けるようになるだけでも時間かかったしね。」
あぁ、そうか。
他の楽器はマウスピースだけで音を出すのに1日かかるのも珍しくないと聞く。
みんな大変なんだね。
「でも1年の時みたいに、カバーしてくれる先輩がいるわけじゃないからね~。」
むしろ私達が後輩をカバーする立場。
私達が下手ではどうしようもない。
「そうだよ!来月までに35人指導して、自分たちもってヤバくない?」
「だから、吹き慣れた曲選んだんだろうね。」
真弓がこたえる。
しかし莉奈が声を上げた。
「あ~私、ソプラノクラリネット辞めようかな~。なんか吹けば吹くほど自信なくなってきた。」
「それ、わかる。」
似たような立場の私が同意する。
「ピッコロも曲中の高い音がまだ出ない。でも辞めるわけにいかないだろうし。正直こわい。」
「そうだよね。ピッコロ何気に目立つしね。」
「うん。莉奈、なんとかなるよ。」
「なるかな~?」
「そういえば比奈ちゃんどんな感じ?」
茜も気にしてくれてるらしい、比奈ちゃんの話題に入る。