吹いて奏でて楽しみましょう
「比奈ちゃんて、あの可愛い子?」
莉奈が首を傾げる。
「誰?比奈ちゃんて?」
前で別の話をしていた恵と真弓が問う。
「うん、ちょっとフルートで一番遅れてる子なんだけど。」
「へ~?練習しないとか?」
「いや。真面目に練習してる。でも今日もみんなで基礎練やったんだけど、ロングトーンもタンギングも不憫なほどできなくて、2年生だから余計後輩の前で恥ずかしくないかと気になるんだよ。」
「そんな子がいるんだ。」
「うん。一回一年とも話し合おうかな~と思うんだけど。」
「何を?」
「比奈ちゃんのこと、ちゃんと先輩として見るように。みたいな?
自分より下手だからって見下してしまうとか、あったらいやじゃない?」
「いやー。」
「考えすぎじゃない?」
「そうも思うんだけど、実際友達の学校の吹奏楽部はそういうのあるみたいなんだよ。」
「えー?」
「なんか、先輩に対して敬語使わなかったり、暴言吐いたりとか。
詳しいことはわからないけど、友達は悩んでたし。うちがそうなるのも避けたい。」
「まぁ、気になるなら一回は話してみた方がいいかもね。」
「うん。機会があれば。」