吹いて奏でて楽しみましょう
正しい答えなんて私も知らない。
ただ学年が一つだけ上で、それだけで先輩。
でもそれだけの認識なら、簡単に不満を持ってしまうだろう。特に今のケースでは。
だから、他に洋子ちゃんや藍理ちゃんなりの理由を考えてほしかったんだ。
「そうね。比奈先輩の一生懸命なところを、洋子ちゃんと藍理ちゃんはちゃんと見てたんだね。
」
ふっと雰囲気を軽くする。
「私がこう言ったのはね。部活って大勢の人が一つのことに向けて活動する場でしょ?
そこでは一生懸命になるあまり、人のことを考えられなくなるかもしれない。
逆に厳しく叱ることもあるだろうし、そこに納得のいかないこともあるかもしれない。」
いや、実際あるのだ。
「人間関係は時に複雑で、難しい。
きっかけは小さなこと、そこでつまずいて分裂してしまうといい部にはなれないと思う。」
去年まで15人で何も出来なかった私達。
「その上、私達は音楽をやっているんだから、どこよりも信頼しあってお互いを思いやったり尊重する気持ちがないと一つの曲は奏でらんない。
出来たとしても、すぐに壊れてバラバラになってしまうか、薄っぺらいものになるでしょうね。」
「はい…。」
「経験者なのよ。私達3年は。」
「?」
「去年は人数のせいだけど、吹奏楽祭にもコンクールにも出れなかった。原因はもっと前からあったのかもしれない。けど、私の一つ上の先輩はそのまま引退したし、以前のままなら部が消滅してしまうところだった。
出来ればね。気持ちいい関係で楽しく合奏したい。せっかくこんなに集まってくれたんだし。
そう思わない?」
「はい。」
「きっと、楽しいよ。
まぁ、洋子ちゃんと藍理ちゃんはいい子だからね。わかってくれると思ってた♪」
「えへへ。そんなことないです。」
「ううん。私はいい後輩を持って嬉しいよ。」
最後は冗談ぽく言ったけど本当だよ。