吹いて奏でて楽しみましょう
「ちょっとちょっと。金城さん。」
「?」
フルート5人での基礎練の途中、一区切りついたところで後ろから声がした。
振り返るとパーカッションのメンバーがいる。
いつの間にかパーカッションの基礎練はフルートが使う第2教室でやっている。
時々、ちょっとうるさいな~と思ったり…
「何?田中君、呼んだ?」
田中君は去年の転校生。今はスネヤ担当で、パーカッションの新入生を指導している。
パーカッションは去年まで一人でドラムセットを使っていたのだが、今年は5、6人に増えた。
特にショートカットで色黒の女の子は顔もキリリととして、様になっている。
他にも女子が2人、男子は田中君ふくめて3人だ。
吹奏楽には珍しい男子の一人は色白でよくはしゃいでいる。
もう一人は部でも一番小っちゃく、丸坊主で、とても愛嬌があり、3年と先生からはマスコット的存在として愛されている。
小さな体で比較的力の必要なパーカッションを一生懸命やっている仕草が滑稽でまた可愛いらしい。
そんなパーカッションは、いつも楽しそうに見える。
指導している田中君もとぼけた面白い人だから、尚更だろう。
たまに、元気すぎる後輩に手を焼いている様子も見受けられるが…
「うん。ちょっと聞きたいんだけど、今いい?」
「いいけど。何を?」
「これこれ。」
田中君が指差したのは、パーカスの楽譜。
「え?パーカスの楽譜なんて知らないよ。」
見るのも初めて。意味がわからない。
「あー、ここのリズム教えてほしいんだけど。」
「リズム?」
4分音符や8部音符などがならんでいる。これならリズムぐらいはわかりそうだ。
私は足を手で叩きながら、解析してみた。
「たぶん…」
「わかった。ありがとう。」
説明し終えると、田中君は早速練習し、私も席に戻る。
ん?田中君リズムを刻むパーカッションだよね?
私に聞くなんて、大丈夫か!?
と心の中でツッコミを入れてみる。