吹いて奏でて楽しみましょう
大会前1週間を切ってから、まだ解決してない問題がフルートにはあった。
「楓先輩、最後のトリルなんですけど~。」
「あ~…」
課題曲、アップルマーチの最後のトリル。
一番高い音階で目立つはずなのだが、指遣いがわからない。
普通トリルは、元の音と隣接する音、この2音を交互に素早く吹くのだが。
普通なら、一つのキーを連打するだけで、できるもの。
だが、高い音は指遣いが複雑で、トリルの時の連打する場所がわからない。
以前、OBの先輩に聞いたのだが、結局わからなかった。
フルートの先生が来た時はまだ曲の最後まで練習してなかった。
先生に相談したところ、最悪、トリル無しでもいいと言う。
最後まで探してみなさいとは言われたけど…
「ごめん。まだわからないや。私の姉の知り合いにも聞いてみるつもりだけど、忙しい人だからどうなるか…」
私だって、トリルで閉めたいのだが。
あ~。トリルの教則本があればな~。
しかし、その知り合いも、やっと会える日に限って、台風が来てしまい、会うことはできなかった。
その最後の頼みの綱が切れたのは本番直前だった。