吹いて奏でて楽しみましょう


~♪

一曲目は課題曲、アップルマーチ。

初めから細かいスケールが木管全体にあり、合わせにくい難しい曲だ。

合奏中、何回も合ってないと、先生に言われて練習した。


特に、一年生は初めてのスケール。

「この速さだよ。」

メトロノームで奏でる。

「ええ!?はやっ!」

「うん。そだね。」

「いやいやうそだ~」

「いやいやほんとなんだこれが。スケールと言って…」

そして試しにやってみた一年は

「ムリ…」

と呟く。

「そうだね、急には無理。でも練習すれば大丈夫だよ。まずはね、初めからこの速さじゃ速いから、遅くしてみる。」

そう言ってメトロノームを遅くする。
それに合わせて私が吹いた。

「はい、この速さでやってみて。」

戸惑いつつやってみるが、

~ ~♪

「出来ない…」

「うん、じゃあまた遅くする。」

かなりメトロノームのリズムが遅くなったが、今度は逆に、リズムに合わせるのも難しくなったようだ。

それに指もついていけてない。

でも私は想定内だ。

「じゃあ、これで…」

メトロノームを少しだけ早くし、

「一音一拍ずつ吹いてみな?」

「え?」

カチ、カチ、カチ、カチ、

「ドー、レー、ミー、ドー、レー、ミーって。」

「そんなゆっくりですか?」

「いいからいいから。」

~♪

「うん、できたね。ここから練習して、慣れたらどんどんリズムを早くすればいいんだよ。
この速さはさっきの一拍と同じだから。」

「はあ。なるほど。…道は遠いな~。」

それを聞いて呟いた洋子ちゃんと遠い目の藍理ちゃんを見て思わず笑う。

「そうだね。でも、そのうち出来るから、まずはしっかり指に叩き込むこと。
あと、口で音階を言うのもいいよ。」

「はい。」


そんなこんなで、練習に明け暮れていたが、今では様になっている。

実はスケールで一番大切で難しいのは、リズムを正確にすること。

「一拍に決められた音をちゃんと入れられるようにしなければならないんだよ。」

聡美先輩から教わったこと。

速いからといって、適当に指を動かせばみんなと合わないのだ。


< 432 / 467 >

この作品をシェア

pagetop