吹いて奏でて楽しみましょう
スッ
降ろされた指揮棒が再び上がる。
少し緩んだ気を引き締め直す。
一斉に楽器が上がり、呼吸のタイミングを計って
ヒュッ、ヒュッ!
パァーン!!
音楽が始まった。
すぐにフルートのソロが始まる。
私はフルートに持ち替え構えると、ソロパートを一緒に吹く貴子ちゃんとすばやくアイコンタクトを取る。
さっき確認した二人の音が重なる微妙な位置に楽器を回す。
すぐに指揮に目を戻し、
~♪
私達はお互いの音を確認しあいながら、一つの楽器で吹いているように細心の注意を払う。
~♪、~
ソロパートが終わると先生が私達に頷いた。
うまくいった?
ちょっと音合わせるのに気を使いすぎて、音の大きさが思いのほか小さくなってた気がするんだけど…。
当初、一人だと音が小さいと言われ、二人になったソロパート。
う~んま、いっか。音が合わないのもマイナスだし。
そんなことが頭をよぎりながらも、すぐにピッコロに変わらないといけない。
ここで楽器取り損ねて落としたら大変。
そんなことは一度もないが、不安定なパイプイスに置いた楽器と、緊張感が油断を許さない。
譜面台にも当たらないようにそっと戻す。