吹いて奏でて楽しみましょう
「じゃあシンフォニア・ノビリッシマ合わせまーす。」私が言うと、
「ええ~。」後輩達は困惑の声を上げる。
私もええ~?と言いたい。
「まあ、私もできないけど一応全体合奏で急にやるよりはいいでしょ?」
「そうですね…」
「はい、じゃあ楽譜出して~。」
「あ、ちょっと練習してもいいですか?」
「いいよ。では5分…いや10分ぐらい個人練習。」
10分後。持っていたピッコロを置いて唾抜きの細い棒を持つ。
「そろそろやるよ~。」
私が言うと二年生は「はい。」と答えるが、
「え、まだ…」一年生はまだ戸惑う。
「もうかんねんしなさい。分かんないところは教えるから。」
「はぁ…ぃ。」
「うむ。では…」
ピッコロの楽譜を納めているファイルのページからフルートの楽譜を収めているファイルのページをめくる。
「4小節目からいこうか。速さはこれぐらい。」
カッカッカ…持っている棒でリズムを刻む。
「いい?」
「はい。」
「では用意。さん、はい。」
…~♪ ん?
「やめやめ。もう一回やってみよう。」
「はい。」
「…いち、に、さん、はい。」
…~♪ あ~なるほど。
以前この曲のCDを聴いて勘違いしているらしい。
リズムが違う。
確かにこの箇所のフルートは他の楽器に消されて聴こえにくい。
それに微妙にリズムが似ているから私も初めは勘違いしていた。
でも正確にリズムがとらえられれば、おかしい事に気づくし、CDからも微かにだけど聴き取れるんだよね。
なるほど、これは茜達の基礎講座は必要かも。
「ここ、ちょっと違う。初めは八分音符でしょ。ちゃんとリズムに合わせて音符の長さを確かめてね。貴子ちゃんリズムきざんでくれる?」
「はい。」
フルートで何回かお手本をみせると、各自練習。
これCDを聴いてなければ間違わなかったんじゃ…。
ともかく事前に確認しといて良かった。最初から間違っていたし。
まてよ、まさか私が間違ってるわけじゃないよね?
後輩とはいえ、ピアノを習ってるはずの貴子ちゃんまで間違う?
4対1でいささか不安になる。
いや、でもどう考えても…ま、間違ってたら合奏で注意してくれるよね。
安易に考える私だった。
それから合奏を再開して、できないところはできる人のを聴いたり、全員でリズムチェックをしたりと、個人練習につなげていった。
私にもお手本を示せないところはたくさんある。
だいたい一番高いソのトゥリルなんて知らないぞ。
それに一回私もピッコロで合わせてみたが、
「なんか意味分からないね。」
ピッコロの楽譜だけ違うところがありすぎて他の子がキョトンとするのと、みんな自分が吹くので精一杯で合わせられないのだ。
なにせほぼスケールばかり。
全体合奏はどうなる事やら。
楽譜を見つめる目が遠くなる。