吹いて奏でて楽しみましょう
「演奏中だから静かにね。」
先輩が小声で呼びかける。
私達は舞台裏に続く廊下に並んでいた。
「胸ポケットに何も入れないで。身だしなみも整えてね。」
私達はお互い服装や髪をチェックする。
「今のうちに楽器温めといて。」
楽器を、温める?
どのように?
息を吹きかけるのかな?
それとも体温で?
毛布とかもないし?
私達がポカーンとしていると
清花先輩や香奈恵先輩が楽器の吹き口からは~っと息を送るように吹きかけた。
更には下のほうからも。
なるほど息を入れて温めるのか。
見よう見まねでやってみる。
もちろん音は出さない。
冷えた楽器だとピッチ(音程)があがるらしい。
普段は合奏の前に個人練習で楽器は十分温まっているからいいが、
こういう時は待っている間に楽器が冷えてしまう。
そうこうしているうちに舞台そでまで列が進んだ。
はっ。いよいよ次だ。
初めての公の舞台。その舞台裏なんて入ったこともなかったのに。
今から舞台に立って演奏するんだな~。
正確には座ってだけど。
はっ!曲が終わった?
と思ったら2曲目が始まった。
2曲目あるんかい!
一瞬緊張感が走ったのに拍子抜けする。
私達は1曲だ。
♪~。…パチパチパチパチ
あ!終わった?
前の学校は立ち上がって一礼し、去っていく。