約束〜不確かな未来〜
――なんて爽やかな青年なんだろう――


途端に意識してしまった私は

ドギマギして立ち上がった。



「すみません。お邪魔しちゃって…
あたし、もう帰ります!」


「僕も、もう帰りますよ」


男はそう言うと

またヒョイっとデッキから降り

ミュールを履いて、グラグラしている私に手を差し延べた。


私は、少し怖かったので

遠慮なくその手を借りた。


降り立つ瞬間、手に力がこもる…


男の手は少し汗ばんでいたけれど

ちっとも不愉快ではなかった。



無事デッキから降りると

すぐに手を離した。


「ありがとう…」

男の顔をまともに見ることができず

俯いたまま礼を言った。



男は何も言わなかったけれど

きっとさっきと同じ

線になってしまうような目で笑っているんだろうな…と思った。



男の半歩後ろを歩く……


時々振り返っては

「ヒール、気をつけて下さいね」

と気遣ってくれる優しさが温かった。
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